乳がん発覚と病院選び

からだ・こころ

長期治療を過ごす場所

「告知までの時間」

乳がんがわかったのは59歳の誕生日の数日後だった。

たまたま、ほかの病理検査を受けていた友人と時期が重なり、 

お互いの話をし、結果待ちになっていた。

検査した病院は入院施設などはない女性医師がされている乳腺クリニックでした。

「もしかしたら、まだわからないけど」と検査結果は2週間後。

検査の結果を待つしかない。

この期間は、空虚のような、ふわふわしたような、何とも言えない時間だった。

「治療は1年と言われた日」

担当医には検査結果当日

「手術含めて何日ぐらい入院すればいいのですか」と担当医に聞いた。

手術して癌を切除すれば、治療は終わる、ぐらいに思っていた、私。 

乳がんは切除すればいいわけではないと。

私の診断結果はHER2陽性乳がんでした。以前は治療が難しいタイプと言われていたそうですが、現在は分子標的薬など治療の進歩により、治療成績も大きく変わっていると説明を受けました。 

今は、術前と術後に化学療法をするのが標準治療なのだと。

愕然としました。どれだけの時間がかかるんだろう、3カ月、半年?と頭の中で考えていると、

医師から「治療は1年ぐらいかかります」と言われた。

1年……。

その言葉を聞いた瞬間、頭の中でいろいろなことが巡った。

「治療が終わる頃、私は何歳になっているんだろう」

もうすぐ60歳という節目を迎える時期だった。

「これからの時間を考えた瞬間 」

実は、乳がんがわかる前、11月末には京都の紅葉旅行を予約していた。
友人と楽しみにしていた旅行だった。

もちろん、今は治療が一番大事。
そんなことは自分でも分かっていた。

でも、病気を告げられた瞬間、それまで当たり前のように考えていた予定が、急に遠くなってしまった。

病気になる前の私は、これからも当たり前に予定を立てて、楽しみを作っていけると思っていました。 

「治療期間中、私は何もできないのかな」

そんな気持ちが湧いてきた。

1年という時間が、ただの治療期間ではなく、私の日常や楽しみにしていたことまで止まってしまうように感じた。

もし、もっと若い時だったら、また違う受け止め方をしていたのかもしれない。

でも、60歳を目前にした私は、残りの時間をどう過ごしていきたいのか、そんなことまで考えるようになった。

「病院はどうしますか、どこにしますか?」と。

「は~、あ~、そうですね。」と

自宅からのアクセスを考えて選び、紹介所を書いていただきました。

「初めての化学療法室で感じた冷たい違和感」

選んだ病院を受診すると、担当は男性医師でした。

「では、最初の抗がん剤治療の日を決めましょう」と言われ、私はいくつか候補日を考えていました。
すると、「先に化学療法士の話を聞いてきてください」と言われ、看護師さんに付き添っていただき、化学療法室へ向かいました。

初めて入る化学療法室は、私にはとても冷たく感じる場所でした。
これから始まる治療への不安もあり、緊張しながら説明を聞きました。

化学療法士さんから抗がん剤の進め方の用紙を見せられ、
「先生はどちらの薬からやると話されていましたか?」
と聞かれました。

私は、その時点で少し戸惑いました。
治療方針について、まだ十分に理解できていなかったからです。

「すみません、私はまだ分かりません」

そう答え、一通り説明を聞いた後、再び医師の診察室へ戻りました。

改めて治療日を決めることになり、私が候補日を伝えると、
「その日は不在です。学会などでいないことも多いので、その場合は他の先生にお願いすることはできません。日程を変えてください」と言われました。

もちろん、先生にも予定があることは理解しています。
でも、これから始まる長い治療を考えた時、私には「患者である自分が先生の予定に合わせ続けるのだろうか」という不安が残りました。

これから長い治療を一緒に進めていく先生として、少し考えるきっかけになりました。

なんとか日程を調整し、その日は帰宅することにしました。

帰りにたまたま、同じ時期に病理検査結果を待っていた友人と会うことになった。 
幸い彼女は、特に異常は認められず、経過観察という結果だった。 彼女に「なんか、自分の予定を優先する医師だった」と話すと、私が迷っている様子を感じ取ってくれたようで、 「ほかの病院も考えたら、知り合いが乳がん治療していた病院、どうだったか聞いてみるよ」って言ってくれました。

その友人曰く「医師、看護師さんほかがチームでやってくれて、私はあの病院で治療してよかったと思ってる」という回答がありました。

「長期治療に向き合う場所」

それを聞いて、私には、一人の先生だけではなく、医師や看護師さんなどチームで支えてもらえる環境の方が合っているのだと思いました。 

長い治療なんだし、何より病気なんだし心地よく納得して通院できるところがいいと、さっそくその病院に電話をすると、まず、乳腺科の受付段階でとても親身なって聞いてくださり、転院の進め方まで、丁寧に教えてくれました。

決して、はじめに行った先生が悪いということではありません。

ただ、これから始まる治療は、短期間で終わるものではありませんでした。
術前の治療、手術、その後の治療……。
1年以上になるかもしれない時間を、この先生と一緒に向き合っていくことを考えた時、私の中には少し不安が残りました。

やっぱり、あの時、違和感をそのままにせず、勇気を出して病院を変えて良かったと思っています。 

転院した病院では、医師、看護師さんをはじめ、多くのスタッフの方がチームとなって治療に向き合ってくださり、心配な時には気軽に相談することもでき、長い間続いた治療期間を安心して通院することができました。 

あの時、思い切って病院を変えて本当に良かったと思っています。

治療そのものだけではなく、長い時間をどこで、誰と向き合っていくのかも大切なのだと感じました。

そして、1年以上という時間を過ごす場所もまた、治療の一部だったのだと思います。

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