「美味しい」が消えた日々
抗がん剤の副作用には、だるさや発熱、吐き気や便秘があった。
それらは処方された薬である程度抑えることができた。
でも、私にとって一番つらかったのは、味覚障害だった。
もし、このまま一生治らないのなら、生きていたくない。
本気でそう思った。
食べて味を感じ、美味しいと感じることって、生きていくうえで当たり前すぎることだった。
だから、それを失うまで、その大切さを考えたこともなかった。
口に入れたものはすべて、今まで味わったことのない、味。
苦いとも、辛すぎるとも、表現できない味。
私の場合は特にお醤油系のものが、とにかくダメで、味が濃いものが全くダメでした。
一般的に、カレーは定番で、思い浮かばなかったらカレーをと思っていたけど
カレーなんてもっての他だった。
抗がん剤の副作用は、回数を重ねる程、副作用度が増していくようで初めから味覚障害症状があったわけではない。
他の抗がん剤の副作用もあるのに、そのうえこの味覚障害を感じたときは
乳がん治療が終わったとしても、この味覚障害が続くのであれば、「生きていくことをやめたい」と。
「あなたは乳がんです。」そう告げられた日よりも、
味覚障害に苦しんだあの日々の方が、私にとっては絶望だった。
「自分で寿命を決めさせてほしい」とさえ思った。
食べる楽しみを奪われてまで、生きていたくない。
今でも100%元通りではない。90%くらいかな。
やはり少しだけ、ふとしたときに苦み的なものは残ってる。
でも、一番ひどいときより全然まし。
だから今は、食べて「美味しい」と感じられる時間を、好きなお酒とともに、気の合う人たちと心地よく過ごしたい。
乳がんを患って、お酒なんてと思う人もいるかもしれない。
再発のリスクを考えれば、飲まない方がいいのかもしれない。
でも私には、この先どれだけ「美味しい」と感じられる時間が残っているのか分からない。
そして、もし再発したら……。
その時にならないと分からないことだけれど、現時点では抗がん剤を選ばないかもしれないと思っている。
でも、あの辛さより、それでも生きていたと思うかもしれない。
ただ、今はおいしい食べ物と、好きなお酒を、楽しんでいたい。
限られた時間をどう過ごすか。
それは、私自身が選んでいくことだから。
※味覚障害の程度や回復には個人差があります。この記事は、私自身が治療中に感じたことを記録したものです。

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